2016年10月24日月曜日

故郷の廃家

 「幾年(いくとせ)ふるさと来てみれば/咲く花啼く鳥そよぐ風/門辺の小川のささやきも/なれにし昔と変わらねど/あれたる/わが家/住む人絶えてなく」アメリカのウィリアム・へイス作曲の「My Dear Old Sunny Home」に犬童球溪(いんどう・きゅうけい)が作詞して1907年に発表された歌です。私が子供の頃にはよく歌われたものです。

 私の故郷は鳥取市です。本籍地は、鳥取県東伯郡湯梨浜町はわい長瀬。「日本のハワイ」と呼ばれた羽合温泉で有名なところです。古くは伯井田(はくいだ)という地名が、秀吉の時代頃には「羽合田(はわいだ)」に変化したもののようです。ここに大地主であった祖父が大きな屋敷を建てていましたので、私たちはふだんは鳥取市内で借家暮らしでした。

 終戦後占領軍が出した農地解放令により地主であった祖父は没落して、その大きな屋敷は取り壊されて敷地は人手に渡りました。小学生時分には、私は夏休みや冬休みにこの広い家で過ごしたものです。しかし、歌の歌詞のように残っているが誰も住まなくなった廃家になっているより、姿を消してくれている方がさっぱりして良いと思っています。


 村の様子もすっかり変わってしまい咲く花も啼く鳥も、変わりました。一番変わったのが小川の様子です。周りの農家は井戸がなくてもこの小川で食器も汚れものも皆洗っていました。流れも透明でした。今は水道が引かれ、川の水も暗くよどんでいます。多分に感傷的なこの故郷の廃家を歌う雰囲気は、今ではどこにも残っていないように思えます。

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